私がお預かりさせていただいています西福寺では、入院中や病気療養中でお寺参りが困難な方にもご法話をお届けしたいと思い、2012年から法座のインターネット配信をおこなっています。法座が始まる前から、お同行が集まってこられ、一緒にお勤めをして、ご法話をお聴聞し、帰っていかれるまでを、毎席、YouTubeLiveでリアルタイム配信をしています。
そんななか、このたびの新型コロナウイルス感染拡大で、健康な方であっても、なかなか一同に集うことのできない事態となってしまい、全国で多くの法座、法話会、講演会が、中止もしくは延期されるようになりました。
そこでこれを機に、お寺の行事などを動画にしてインターネットで配信したいと考えられている方も多いようです。でも実際に始めるとなると、どうやったらいいのか、どんな物が必要なのか、躊躇されている方もいらっしゃると思います。
そこで、これまでの経験をふまえて、お寺でのインターネット動画配信を考えてみたいと思います。今回は「どうやって配信したらいいのか」、そして「何を配信したらいいのか」についてです。
Ⅰ.どうやって配信したらいいの?
ⅰ.SNSで配信
いまからでもすぐに始められるのが、SNSでの動画配信です。いまでは有名アーティストも、InstagramLiveやLINELive、FacebookLiveなどを使ってさまざまな動画を配信をしています。普段、SNSを使っているスマートフォンやタブレットで配信できるので、新たに機材を揃える必要がありません。とくに近年スマートフォンのカメラは高性能になっていますので、動画もとても綺麗に配信することができます。
また、フォロワーのタイムラインにアップされ見てもらいやすく、「いいね!」などの反応も返ってきますので、続けていく励みにもなるかもしれません。
配信時間には制限があります(インスタとLINEは60分、Facebookは4時間、だと思います)が、手軽に配信できるには十分な時間だと思います。
一方で、配信した動画の保存期間が限られていたり、タイムラインの中に投稿が埋もれていったりして、リアルタイムで見ることができなかった人が見つけにくいという点は注意が必要です。事前に配信時間などを投稿し告知をしたほうがいいでしょう。
あと、スマホなどのマイクでは、雑音が多いというときは、Bluetooth対応のマイクを使ってみてはどうでしょう。片耳につける通話用のヘッドセットなどは、目立たないので法衣をつけての配信の際にはおすすめです。
とにかく、無料で手軽に始められるのがSNSでの動画配信のいいところです。
ⅱ.インターネット会議システムを使っての動画配信
テレワークの推奨などで注目されているのは、インターネットを使っての会議システムです。Zoomなどが有名ですが、SkypeやLINEのビデオ通話、Googleハングアウトなどがあります。こうしたインターネット会議システムを使って動画配信をすることができます。配信する側と視聴する側が同じソフトやアプリを使わないといけませんが、グループ内だけでやり取りができますので、動画を一般に公開するのは少し抵抗がある方にはおすすめです。
配信側は登録や設定が必要になります。スマホやタブレットでもできますが、パソコンでするほうが簡単です。ノートパソコンでしたら内蔵カメラで始められますが、デスクトップパソコンの場合はUSB接続のウェブカメラが必要です。現在、あらゆる種類のウェブカメラが在庫不足の状態ですので、早めに注文しておきましょう。視聴する側もソフトやアプリのインストールが必要な場合がありますので、事前に双方で、ビデオが映るのか、マイクが使えるのかなどの準備を整えておくのがよいでしょう。
SNSに比べるとすこし手間がかかりますが、限られたメンバーでやり取りができるので安心して始められるのがいいところです。法話会や座談会の配信にはむいているかもしれません。
ちなみにZoomには配信している内容をそのままYouTubeLiveにアップするという機能もあります。
ⅲ.動画投稿サイトへの動画配信
YouTubeやニコニコ動画などの動画投稿サイトには、リアルタイムやアップロードをして動画を配信する機能があります。配信された動画は、広く一般にも公開されるので、だれでも視聴することができます(設定によっては、限定した人にだけ視聴できるようにしたり、コメントがつけらないようにして配信することも可能です)。また、配信後の動画を自分のチャンネルで管理できるので、動画一覧から過去の動画を探すのも簡単です。
※以降の記事はYouTubeしか使ったことがないので、YouTubeLiveについての感想です
ただし、リアルタイム配信は少し手間がかかります。YouTubeLiveでは、スマートフォンやタブレットのカメラを使ってリアルタイム配信ができますが、チャンネル登録者数が1000人以上必要という制限があります。開設したばかりではなかなか難しいかもしれません。
そこで、開設直後はエンコーダーとよばれる配信ソフトを使って、エンコーダー配信するという方法が一般的です。この場合はチャンネル登録者数は関係ありません。このエンコーダー配信は少しコツがいりますが、慣れるとソフトの機能を使って簡単に、多彩な内容で配信をすることができます。西福寺ではこの方法で法座を配信しています。
一般に公開されることには抵抗がある方もいらしゃるでしょうが、やはり多数の人が視聴してくださるという可能性があるのはメリットだと思います。
Ⅱ何を配信したらいいの?
ここまで読んでいただいて、「やり方ももちろんだけど、何を配信したらいいのか?」「せっかく配信するのだから、みんなに視聴してほしい」「仏教に興味を持ってもらうにはどんな内容を配信しなといけないのですか」などと感想を持たれた方もいらっしゃるでしょう。
私は、「自分が伝えたと思うことなら、何を配信しったって構わない」と思います。(もちろんそれを配信したことによって、他人が傷つくことがあるのではないか、という想像力は必要です。しかしそれは、動画配信だけに限らず、すべての人間関係において必要なことです)
そもそも私たちは、他人が興味を持っていることをすべて把握することはできません。ましてや、すべての人に同じように興味をもってもらうのは不可能なことです。また配信をした瞬間に、興味を持ってくれる人が視聴してくれるなどということはほとんどありません。多くはその他の多数の情報に埋もれていってしまうことでしょう。
しかし、配信しておきさえすれば、そのときは見ることができなかった人も、なにかのきっかけで配信した動画にたどり着くことがあるかもしれません。そうして浄土真宗に興味をもってくれるようになるかもしれません。そんな人がたった一人でもいらっしゃるのだとしたら、「自分を伝えたいことを配信をする意味」はあるのではないでしょうか。
確かにインターネットでの動画配信は新しい手段ですが、何も新しいことを伝える必要はないのです。
「いままでやっていたことや伝えたいと思っていたことが、伝え方を変えるだけで、いままで届くことがなかった人に届くかもしれない」
これが、インターネットによる動画配信の可能性だと思います。
みなさまも、「お念仏って有り難いんだよ」という思いを、自分なりの動画にしてインターネットで配信してみてはいかがでしょう。世界のどこかにその動画を待っている人がいるかもしれませんよ。
(次回は実践編として、西福寺でどのように配信しているのかをご紹介させていただきます)